問題の本質を捉える「問い」の技法が、私たちにもたらす力と道しるべ――cotree/CoachEd櫻本真理さん×安斎勇樹対談

問題の本質を捉える「問い」の技法が、私たちにもたらす力と道しるべ――cotree/CoachEd櫻本真理さん×安斎勇樹対談

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2020.08.13/ 16min read

「答えより問いが重要だ」

そんな言説が目立つようになってから、しばらく経ちます。たしかに「問い」が重視される場面は増えてきました。カウンセリングやコーチングの現場における「問いかけ」、企業内部で自社のビジョンやミッションの問い直し、「問い」を起点に新しい事業を考えるなど、さまざまな場面で「問い」が用いられています。

しかし、問いかける技法に関しては、それが暗黙知のままになっているのではないでしょうか。「問いかけ」の熟達者に、その技法やこれからの時代における「問い」の重要性を深堀りするべく、『問いのデザイン』の共著者であるCULTIBASE編集長の安斎勇樹がホストを務める連載企画「『問いのデザイン』を拡張せよ」を始めます。第1回はcotree/CoachEdのCEOを務める櫻本真理氏をゲストに迎えました。

日々の業務でカウンセリング・コーチングに携わる櫻本氏は、クライアントに「問い」を投げかける立場の人間として、『問いのデザイン』の内容に感化された模様。その感想を皮切りとして、2人が日頃から大事にしている問いの意識や、ファシリテーションとコーチングにおける問いの技法の違いについて、存分に語ってもらいました。

目次
「課題設定」の技術は、社会人の一般教養だ
会議は「問い」で研ぎ澄まされる
挑戦は「失敗の定義」から始まる
“問い未満”の違和感を捉える技法、「異化」と「増幅」
「個」にアプローチするコーチング、システムにアプローチする「ファシリテーション」
問いのデザインとは、自己変容のスキルである


「課題設定」の技術は、社会人の一般教養だ

安斎:櫻本さん、Twitterで『問いのデザイン』の感想をツイートしてくださっていましたよね。ありがとうございます! 僕の「本を出しました!」というツイートよりファボやRTが集まっていて、ちょっと妬いていました(笑)。

櫻本真理 cotree/CoachEd CEO on Twitter: “「問いのデザイン」献本いただき読んでいます。課題設定を間違えて前に進まない(むしろ後退する)会議が多く見られる中、社会人の一般教養にしてほしい内容。多くの方に届いて欲しい良書です。こんなに教えていただいて良いのですか。。ありがとうございます🙏 @YukiAnzai https://t.co/TUusADajAx pic.twitter.com/GUZedU1cmf / Twitter”

「問いのデザイン」献本いただき読んでいます。課題設定を間違えて前に進まない(むしろ後退する)会議が多く見られる中、社会人の一般教養にしてほしい内容。多くの方に届いて欲しい良書です。こんなに教えていただいて良いのですか。。ありがとうございます🙏 @YukiAnzai https://t.co/TUusADajAx pic.twitter.com/GUZedU1cmf

 

櫻本:あはは(笑)。こちらこそ、ステキな本を出版してくださって、本当にありがとうございます。「“問い”について、こんなに教えてもらっていいんですか?!」という気持ちになりながら、くまなく読ませていただきました。

私も日頃のコーチングで、個人や組織に対してたくさんの問いを投げます。ただ、コーチングの領域では「そもそも問いとは何なのか?」「よい問いを生み出す対話とは、どういうものか?」といった、問いについての学びはそこまで構造化されてなくて。現場で先輩たちのやり方を見て、感覚的に身につけていくことが多いんですよね。

そうやって自分が培ってきた問いについての非言語的な実践知が、この本の中でわかりやすく整理されていて、ビックリしました。とくに、前半の「問いのデザインの全体像」「課題のデザイン」の章は、領域を問わず、あらゆる組織の学びを加速させてくれる知識だなと感じました。

安斎:そう言っていただけて、今とてもホッとしています。実は、この本の執筆段階から「単純なワークショップのハウツー本にはしたくない」というこだわりがあって。

ファシリテーションの技術的な話にフォーカスするのではなく、その前段の問いのデザイン、すなわち課題設定の重要性を誠実に伝えたかった。そこを評価していただけて、本当にうれしいです。

櫻本:コーチングでも「クライアントの課題をどこに設定するか」は、とても大事なポイントです。それだけにセッションの大半の時間を費やすこともあります。そもそもの課題設定がズレていると、どんなにキレイな結論が出たとしても、最終的にそれがクライアントの行動変容に繋がらないんですよね。

この本の中で語られている課題設定の技術は「社会人にとっての一般教養」だと捉えてもいいなと思っています。課題設定から本質的な「問い」の意識を持ち、目標を見すえ、解決に至るまでのプロセスを自らデザインしていく――こうした思考力はどんな職種や業務でも重宝するはずです。

そういった意味で、本書がワークショップやファシリテーションの技法を解説しながらも、『問いのデザイン』というタイトルになっているのは、とても本質的だなと感じました。どんな人が読んでも、実践的な学びを得られる内容なのがステキですね。

会議は「問い」で研ぎ澄まされる

安斎:たとえば、ワークショップの実施者ではない一般的な社会人の方が、この本に書かれている課題設定の思考法を身につけていくと、日々の仕事はどのように変わっていくと思われますか?

櫻本:Twitterでも少し言及させてもらいましたが、まず大きく変わりそうなのは、会議に向き合う姿勢ですね。組織にとって会議とは、本来は「意思決定や課題解決の場」であって、とても重要なものです。「課題設定とは何か?」ということが理解できていると、あらゆる会議に主体的な参加ができるようになると思います。

最近、私の会社でも「会議増えすぎ問題」が目立ってきています。「それは本当に組織として扱うべき共通の課題なのか?」という前提の議論が不十分なまま「なんとか問題を解決しよう!」と時間を浪費する会議が、気を抜くとどんどん生まれてしまう。

そういう事態にならないためには、トップだけではなく、会議の参加者全員が「意思決定に関わるオーガナイザーである」という自覚と、課題に対しての問いの眼差しを、常に持っていることが大事だなと感じています。その意識は、この本から大いに学べそうです。

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